預貯金、株券、生命保険、自動車名義などなど……
実は、亡くなってからでは名義が変更できない財産もあります。 故人の名義のままでは売却はもちろん、処分することさえできない財産も。
今回は、一つ一つ名義を変更する方法を解説していきます。
株券の売却にも名義変更が必要
亡くなった人名義の株券を売却する場合には、一度名義変更を行う必要があります。
いくら親族だからといっても、自分名義のものでないと売ることができないのです。
〈まずは遺産分割協議〉
株券の名義を変更するためには、預貯金と同じような手続きが必要になります。
つまり、遺産分割協議をして、いくらの株券を誰が相続するのかを決定しなければいけません。
〈故人が持っていた全ての株券を把握する方法〉
「故人がどれだけの株券を持っていたか分からない……」というのはよくある話。
そんな時は、「証券管理振替機構(ほふり)」に電話して、調べることができます。 証券管理振替機構(ほふり)の電話番号→03-3661-0161
〈ほふりに郵送する書類〉
以下の書類を提出することで、どの口座に株を持っているかを教えてくれます。 ・本人確認書類のコピー ・相続する人の住民票 ・相続する人の印鑑証明 ・相続する人の戸籍謄本 ・亡くなった人の除籍謄本
〈証券会社の口座を作る〉
株式の相続は預貯金の相続とは違って、同一の証券会社の口座間でしか移管することができませ ん。 故人と同じ証券会社の口座を持っていない場合には、まず、口座の開設をする必要があります。
〈株券の名義変更の手続き方法〉
証券会社に連絡すると、「相続手続依頼書」をもらうことができます。 これを、以下の書類と一緒に提出すればOK。
・故人の出生から死亡までの戸除籍謄本 ・相続人全員の戸籍謄本※ ・相続人全員の印鑑証明※ ・遺産分割協議書※
*遺言書がある場合には、※の書類は不要となります。 代わりに、遺言書のコピー、相続する人の戸籍謄本と印鑑証明を添付しましょう。
手続きは郵送でも可能で、約1週間程度で完了します。
生命保険は生前の名義変更で1000万円以上の節税に
死後には名義変更できない財産、それが生命保険です。
基本的に、名義の変更を行えるのは、契約者と被保険者の生前のみ。 残される家族により多くのお金を残したいのなら、生命保険の名義変更は、必ず生前に行っておくようにしましょう。
〈生命保険には税金がかかる〉
生命保険にも税金がかかるというのはご存知でしょうか? ・契約者(保険料を払っている人) ・被保険者 ・受取人 の名義次第で、払わなければならない税金の種類や金額が異なります。
〈契約者・被保険者・受取人の関係で変わる税金〉
①相続税
「被保険者=契約者」の場合
夫が自分の万が一に備えて契約した場合などの「被保険者も契約者も夫で、受取人が妻(または子など)」という契約形態の場合には、「相続税」の対象となります。
受取人が法定相続人の場合には、「500万円×法定相続人」の金額が非課税となるため、税負担が少なく抑えられます。
②所得税
「契約者=受取人」の場合
妻が、夫の万が一に備えて契約した場合などの「契約者と保険金受取人が同じで、被保険者が別の人」という契約形態の場合には、「所得税」の対象となります。
分かりやすく言うと、保険料を支払った本人がお金を受け取るということ。
この場合、「所得税」となり、支払った保険料を差し引いて税金を計算することができます。
③贈与税
「契約者/被保険者/受取人」がそれぞれ異なる場合
妻が夫の万が一に備えて契約し、受取人を子にしている場合などの「契約者・被保険者・受取人が全て別々」という契約形態の場合には、「贈与税」の対象となります。
被保険者(この場合夫)が死亡した際に、契約者(妻)から受取人(子)に贈与が発生したとみなされるというわけです。
贈与税の基礎控除額は110万円しかない上に、税率も相続税に比べてかなり高くなるため、3つのケースで最も課税対象額が高くなってしまいます。
このパターンに当てはまる場合には、生前に名義変更をしておくようにしましょう。
以下の3つのケースを参考にしてみてください。
〈名義を変更したい3つのケース〉
特に生命保険の名義を変更しておきたい3つのケースについて解説していきます。 ※生命保険金が3000万円の場合を想定
・「贈与税」→「相続税」にして節税
「契約者・被保険者・受取人が全て別々」→「契約者=被保険者」に
「契約者・被保険者・受取人が全て別々」の場合、「贈与税」の対象となってしまい、税金が非常に多額になってしまいます。
上の図のように「被保険者=契約者」になるように名義変更することで、相続税の対象となり、1300.5万円もの節税になるのです。
・「贈与税」→「所得税」にして節税
「契約者・被保険者・受取人が全て別々」→「契約者=受取人」に
こちらの例も「契約者・被保険者・受取人が全て別々」のままだと、「贈与税」の対象となり、税額が高額になってしまいます。
「契約者=受取人」になるように名義変更することで、「所得税」の対象となり1287.75万円もの節税に。
・「相続税」自体を節税
「受取人が法定相続人以外」→「受取人を法定相続人」に
上記の図のように、受取人を孫などの法定相続人にしている場合には、「500万円×法定相続人」の控除が適応されず、相続税がかかってしまいます。
受取人を子に変更することで、非課税枠が適用され、480万円の節税になるのです。
自動車の名義変更
遺族が、亡くなった人の車に乗るか乗らないかに関わらず、故人の所有していた自動車の名義変更の手続きが必要になります。
車の名義変更も、遺産分割協議後にしか行うことができないので、注意しましょう。
〈自動車の名義変更に必要な書類〉
・遺産分割協議書 ・相続人全員の戸籍謄本 ・故人の死亡が分かる戸除籍謄本 ・相続する人の印鑑証明 ・自動車検査証(車検証) ・自動車税自動車取得税申告書 ・車庫証明書
手続きに必要な書類がかなり多くなるため、注意が必要です。
〈手続きを行う場所〉
車の名義変更の手続きは、車を相続する人が住んでいる地域を管轄する「運輸支局」または、「自動車検査登録事務所」で行うことができます。
軽自動車の名義変更
軽自動車の場合には、手続きが少しだけ簡単になります。
〈軽自動車の名義変更に必要な書類〉
・新所有者の住民票 ・自動車検査証(車検証) ・自動車検査証記入申請書 ・認印
※遺産分割協議書は不要となります。
〈手続きを行う場所〉
軽自動車の場合には、「運輸支局」ではなく、「軽自動車検査協会」で手続きを行います。
クレジットカードのポイントは生前にマイルに変換で相続可能!
クレジットカードのポイントは、基本的に、所有者の死亡とともに失効してしまいます。 しかし、ANAやJALのマイルは相続可能!
生前に、クレジットカードのポイントをマイルに変換しておくことで、相続が可能となるのです。
〈マイルの相続期限〉
マイルの相続期限は以下の通り。 ANA→死後6ヶ月 JAL→死後3ヶ月
あまり期間が長く設けられていないので、注意が必要です。
ゴルフ場の会員権も名義変更が必要
ゴルフ場に連絡すると、「名義書換申請書」をもらうことができます。
以下の書類と合わせて申請しましょう。 ・権利証 ・相続関係の分かる書類(戸籍謄本など) ・相続人全員の印鑑証明書 ・遺産分割協議書
その他の様々な故人名義の契約を解除する順番
財産だけでなく、故人名義の様々な契約も、相続人が解除しなければなりません。
以下が理想的な契約解除の順番になります。
①クレジットカード
②カードで支払っていた契約 ・NHK受信料 ・新聞の契約 ・通販などの定期購入品
③生活インフラ ・固定電話 ・携帯電話 ・インターネット
④ライフライン ・水道 ・電気 ・ガス
基本的に、カード類を止めるのが先決。 ライフラインは、遺品整理を待ってから最後に解約するようにしましょう。
お気軽にご相談ください
大和田税理士事務所では、相続税に関するご相談を受け付けております。
「相続財産への課税が心配」「調べてみてもよく分からない」「身内に頼れる人がいない……」などお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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