[相談]
私は会社で経理を担当しています。 消費税の消費税適格請求書等保存方式(インボイス制度)では、適格請求書(インボイス)の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等について帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けようとする場合(いわゆる自動販売機特例)、その帳簿には、通常必要な記載事項に加えて自動販売機特例に該当する旨や自販機等の所在地を記載する必要があると理解しております。 その記載事項について、先頃閣議決定された令和6年度税制改正の大綱においてその見直しを行うことが示されていると聞きましたので、その内容を教えてください。
[回答]
令和6年度税制改正の大綱では、自動販売機特例の適用を受ける場合の帳簿等への記載事項について、「住所等の記載」を不要とすることが示されました。詳細は下記解説をご参照ください。
[解説]
1.仕入税額控除の適用を受けるための要件
消費税法上の仕入税額控除の規定は、事業者がその課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、その保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、原則として、適用しないと定められています。
ただし、請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の一定の場合におけるその課税仕入れ等の税額については、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められると定められています。
2.請求書等の交付を受けることが困難である場合とは
上記1.の「請求書等の交付を受けることが困難である場合」とは、具体的には、自動販売機又は自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等のうち、その課税資産の譲渡等に係る税込価額が3万円未満のもの(自動販売機特例)等が該当すると定められています。
※ 「自動販売機又は自動サービス機」とは、商品の販売等(課税資産の譲渡等に該当するものに限ります)及び代金の収受が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみにより商品の販売等が完結するものをいい、例として、飲食料品の自動販売機や、コインロッカー、コインランドリー等が該当することとされています(小売店内に設置されたセルフレジなどのように単に代金の精算のみを行うものについては、該当しないこととされています)。
3.現行の自動販売機特例の適用を受けようとする場合の帳簿等の記載事項
上記2.の請求書等の交付を受けることが困難である場合等に該当し、帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けようとする場合には、現行の消費税法では、帳簿の記載事項について、通常必要な記載事項に加え、①帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れのいずれかに該当する旨、②その課税仕入れの相手方の住所又は所在地(例 〇〇市 自販機)を記載することが必要であると定められています。
4.令和6年度税制改正の大綱で示された自動販売機特例の帳簿記載事項の見直し
上記3.の自動販売機特例の適用を受ける場合の帳簿等の記載事項について、令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」では、その見直しを行うことが示されています。
具体的には、自動販売機特例の適用対象となる課税仕入れ等については、上記3.の記載事項のうち、「住所等の記載」を不要とすることとされています。
国税庁では、上記を踏まえ、自動販売機特例における住所等の記載を不要とする取扱いを整備することや、インボイス制度が実施された令和5年10月1日以降の自動販売機特例の適用を受ける取引について、帳簿に「住所又は所在地」の記載する必要がないことを令和5年12月22日に公表しています。
なお、すでに帳簿に「住所又は所在地」を記載していたものについては、特段の対応は不要であることも公表されていますので、この点にもご留意ください。
[参考]消法30、消令49、70の9、消規26の6、財務省「令和6年度税制改正の大綱」(令和5年12月22日閣議決定)、国税庁「令和6年度税制改正の大綱について(インボイス関連)」(令和5年12月22日)など
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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