[相談]
私が経営する会社(設立10期目、9月30日決算の消費税課税事業者です)の、前事業年度および前々事業年度の消費税課税売上高は下記のとおりでした。
令和3年10月1日~令和4年9月30日:1億8,000万円(※1)
令和4年10月1日~令和5年9月30日:7,000万円(※2)
※1 前々事業年度(令和3年10月1日~令和4年9月30日)については、保有していた建物の売却(売却総額1億円)があったため、課税売上高は通常より多くなっています。
※2 前事業年度(令和4年10月1日~令和5年9月30日)の上半期6ヶ月間の消費税課税売上高は、3,500万円でした。
そこでお聞きしたいのですが、当社の令和5年10月1日から始まる事業年度(課税期間)において、消費税のインボイス制度上、当社は、いわゆる「少額特例」の適用を受けることはできるのでしょうか。教えてください。
[回答]
ご相談の令和5年10月1日から始まる事業年度(課税期間)については、少額特例の適用を受けられるものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。
[解説]
1.消費税法上の仕入税額控除の規定の適用を受けるための要件(原則)
消費税の納付税額は、原則として、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算しますが、この「課税仕入れ等に係る消費税額を課税売上げに係る消費税額から控除すること」を、「仕入税額控除」といいます。
上記の仕入税額控除の規定は、原則として、事業者がその課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(インボイスや簡易インボイスなど)を保存しない場合には、その保存がない課税仕入れ等の税額については、適用しないと定められています。
2.少額特例(請求書等の保存を要しない課税仕入れに関する経過措置)とは
上記1.の仕入税額控除の規定の適用を受けるための要件については、経過措置として、①基準期間における課税売上高が1億円以下である課税期間、又は、②その特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者(消費税免税事業者を除きます)が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、その課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、帳簿のみの保存で、その規定の適用を受けられると定められています。
この経過措置がいわゆる「少額特例」です。
3.「基準期間」、「特定期間」それぞれの定義
上記2.の「基準期間」とは、法人の場合、原則としてその事業年度の前々事業年度をいい、また、「特定期間」とは、その事業年度の前事業年度がある法人については、原則としてその前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。
したがって、今回のご相談の場合、基準期間の課税売上高は1億円超であるものの、特定期間の課税売上高は5,000万円以下であることから、令和5年10月1日から始まる事業年度(課税期間)については、その課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満であるものについて、上記2.の少額特例の適用を受けられることとなります。
[参考]消法2、9の2、30、平成28年改正消法53の2、平成30年改正消令24の2など
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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