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【2023年08月29日】従業員を雇用していない個人事業者が支払う報酬料金についての所得税の源泉徴収義務

[相談]

 私はこのたび、プロのカメラマン(個人事業主)として独立することになりました。 私達の業界では、撮影モデル(個人事業主)に仕事を依頼することがよくあるのですが、そのモデルに支払う撮影報酬について、所得税の源泉徴収は必要なのでしょうか。 なお、私は従業員を1人も雇用しない予定です。


[回答]

 ご相談の撮影報酬の支払いについては、所得税の源泉徴収義務はないものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。


[解説]

1.報酬、料金等についての所得税の源泉徴収義務の概要

 所得税法上、居住者(※1)に対し国内において次に掲げる報酬もしくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬もしくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収(源泉徴収)し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないと定められています。

  • ① 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含みます)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので一定の報酬又は料金

  • ② 弁護士(外国法事務弁護士を含みます)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で一定のものの業務に関する報酬又は料金

  • ③ 社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬

  • ④ 職業野球の選手、職業拳闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で一定のものの業務に関する報酬又は料金

  • ⑤ 映画、演劇その他一定の芸能又はラジオ放送もしくはテレビジョン放送に係る出演もしくは演出(指揮、監督その他一定のものを含みます)又は企画の報酬又は料金その他一定の芸能人の役務の提供を内容とする事業に係るその役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除きます)

  • ⑥ キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興もしくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステス等のその業務に関する報酬又は料金

  • ⑦ 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で一定のもの

  • ⑧ 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で一定のもの

※1 所得税法上の居住者とは、国内に住所(個人の生活の本拠)を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。

2.報酬、料金等からの所得税の源泉徴収義務がない場合

 上記1.の規定は、次に掲げるものについては、適用しないと定められています。

  • ① 上記1.の報酬もしくは料金、契約金又は賞金のうち、給与等又は退職手当等に該当するもの(※2)

  • ② 上記1.の①から⑤までと、⑦及び⑧に掲げる報酬もしくは料金、契約金又は賞金のうち、給与所得に係る源泉徴収義務の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの

  • ③ 上記1.の⑥に掲げる報酬又は料金のうち、バー等の経営者以外の者から支払われるもの(バー等の経営者を通じて支払われるものを除きます)

 今回のご相談の場合、ご相談者は従業員を1人も雇用しない予定であることから、上記②の「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人」に該当するものと考えられます。

 したがって、ご相談者からモデルへの撮影報酬の支払いについては、所得税の源泉徴収義務はないものと考えられます。

※2 給与等又は退職手当等の支払をする者については、上記1.とは別の規定により、原則として、所得税の源泉徴収義務が課せられています。


[参考]所法2、183、199、204など


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

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